ikuo’s blog

育児やエンジニアリングについて

モダンイクメン

f:id:martin_lover_se:20191204005002j:plain

この記事は 子育てエンジニア Advent Calendar 2019 4日めの記事です。

adventar.org

ちょっとセンシティブな話題かと思うのですが、当然特定の個人や団体を非難する目的は一ミリもありませんので、 優しい心で、楽しんで読んでいただけたらと思います。

TL; DR

  • イクメンに対するもやもや
    • イクメンではなく父親です」
      • 完全同意だけど、もやっ
    • イクメンはまだ必要
      • 現実と理想の乖離が大きすぎる
  • モダンイクメンとは
  • モダンイクメン is 何
    • Make Safety a Prerequisite / 安全を必須条件にする
      • 育児に安全を、家族にコミュニケーションを
    • Adapt & Learn Rapidly / 高速に学習&適応する
      • 常に変化する状況に適応を
    • Deliver Love Continuously / 継続的にラブを届ける
      • 愛を示す継続的な行動を
    • Make Family Awesome / 家族 を最高に輝かせる
      • 家族全員が無理なく輝ける最善な選択を

イクメン」に対するもやもや

先月2人目の息子を授かり、絶賛2回めの育児休業中です。新生児かわいいです。 ママの出産からの回復を全力でサポートするべく、すべての家事を引き受けつつ、できるだけママが休めるように心がけています。

またかれこれ二年前ですが、長男のときは、妻の職場復帰を助けるためパパ一人の育児休業を8ヶ月ほど取得しました。 その時の様子や、考えたことはこちらの記事に記しています。

martin-lover-se.hatenablog.com

自分で言うのはアレな感じがしますが、俗に言う「イクメン」であると自負しております。

アレではあるのですが私、名前を漢字で書くと "育男" でして、生粋のネイティブイクメンであり、イクメンを名乗るのに誰にも遠慮することはないと思うところであります。

しかしながら、悲しいかなこの「イクメン」、最近では批判的...とまでは行かないまでも、否定的な意見もしばしば見かけます。 ママだけでなくパパからも、「イクメンと言われると違和感がある」という旨の発言を聞いたことがあります。

最たる例は「イクメンではなく父親です」でしょうか。

『イクメン』って言葉、もうやめませんか?育児をする男性は「父親」です。

おっしゃるとおりで、個人的には完全同意です。

でも、少しずつでも変わろうとしている現状をシャットアウトしてしまうような気もして、ちょっともやっとするんですよね。

イクメンとは

そもそもイクメンという単語はどういう意味でしょうか。

イクメンとは、子育てを楽しみ、自分自身も成長する男性のこと。または、将来そんな人生を送ろうと考えている男性のこと。 --- イクメンプロジェクト

イクメン」とは「子育てする男性(メンズ)」の略語。単純に育児中の男性というよりはむしろ「育児休暇を申請する」「育児を趣味と言ってはばからない」など、積極的に子育てを楽しみ、自らも成長する男性を指す。実際には、育児に積極的に参加できていなくても、将来的にそうありたいと願う男性も含まれる。 2010年6月、長妻昭労働大臣が少子化打開の一助として「イクメンという言葉を流行(はや)らせたい」と国会で発言し、男性の子育て参加や育児休業取得促進などを目的とした「イクメンプロジェクト」を始動させたのをきっかけに、同語は一気に浸透した。 --- イクメン - コトバンク

2010年に有名になったようですね。厚生労働省イクメンプロジェクトが発端のようです。 定義がちょっと曖昧な気はしますね。

また、今の僕の価値観だと、育児に "参加" という表現には違和感があります。 育児の主体がママにある前提になっちゃってますよね。

10年前(から変わってないかどうかはわかりませんが)にできた言葉なので、今の価値観とそぐわないところがあっても仕方ないところもあるかなぁ、という気もしますが、 現実を見ると、そうでもないことを思い知らされます。

男性の育児 "参加" の現実

平成30年度雇用均等基本調査(確報) 事業所調査

(2)育児休業者割合 平成 28 年 10 月1日から平成 29 年9月 30 日までの1年間に配偶者が出産した男性のうち、平成 30 年 10 月1日までに育児休業を開始した者(育児休業の申出をしている者を含む。)の割合は 6.16%

(3)育児休業の取得期間 男性は「5日未満」が 36.3%(平成 27 年度 56.9%)と最も高く、次いで「5日~2週間未満」35.1%(同 17.8%)となっており、2週間未満が7割を超えている(表3,図3,付属統計表第6表)。

6%のパパしか育休を取得しておらず、うち 70% が2週間未満なんだそうです。 率直な感想としては、「進捗ダメです」ですかね。

個人的な経験としても、まだまだパパの育児は浸透してないな、と感じることはしばしばあります。 前回の育休のとき児童館や保育園のイベントなど、平日に子供と遊びに行くところで、パパと子供の組み合わせを見ることは非常に稀です。 ママといっしょのケースは極々稀にありましたが、パパだけで、特に乳児を連れて遊びに来ているケースはほぼなかったと思います。 ちなみに今でも殆ど見かけません。20人に1人のパパが育児休業を取得して家にいるはずなのに...?

国際社会と比較するとどうでしょうか。

男性の育児休業の取得促進に関する施策の国際比較

USやイギリスやら、日本よりアレな国もありますが、

スウェーデン 1974 年時点では、両親手当の受給可能期間の 99.5% を女性が、0.5% を男性が受給してい た(87)。これが、クオータ制の導入された 1995 年には女性 90.4%、男性 9.6%、2016 年では女性73.0%、男性 27.0% となり、男女間の支給期間の差は縮まっている。

ノルウェー クオータ制が導入された 1993 年には、調査対象の男性のうち、両親休業を取得した者は 4.1% であったが、翌 1994 年には 45% に上昇した(100)。両親手当の受給率は、公的な統計により公表されている。ノルウェー労働福祉局が 2007 年 9 月生まれの子について行った調査では、両親手当の受給資格がある父親のうち、実際に受給した父親は 99% に達している。

イクメンの国として有名どころのスウェーデンノルウェーとはだいぶ差がありますね。

もちろん、育児休業を取得するか否かだけで育児へのコミットを判断しようという話ではありません。 が、現実として最も大変な新生児の時期や、ママの仕事への復帰の助けになれていないのは明白で、 まだまだ男性が育児にコミットできてない、あるいは関与が薄い社会であるように思われます。

この状況を打破、改善しようとする志や取り組みは歓迎されるべきものであるはずです。 そして今日もイクメンはその役割を果たしたとは言い難い ー つまりはまだイクメンは必要だ、と言えるのではないでしょうか。

イクメンに対するマイナスイメージ

にもかかわらず、冒頭で記したようにイクメンという単語にマイナスのイメージを持つ人が少なからずいるようです。 この原因は大きく2つあると考えます。

  • 期待値の相違
  • バイナリ思考

期待値の相違

イクメンという言葉は、もともとは育児をする/しようとする男性を肯定的に捉える言葉であったようなのですが、 それ以上に、「普通よりも育児にコミットする男性」を指す言葉として捉えられているように感じます。 この「普通」と言うやつが曲者です。

近年、特に働く女性を中心に、男性に求める育児へのコミットメントのレベルが高まっているのを感じます。 おそらく年代によってもかなり違うかと思いますし、あくまで僕の観測範囲での個人の感想ではありますが。

父親に求める子育てや家庭へのコミットー「普通」のレベルが10年前と比べて相対的に高まっているにもかかわらず、イクメン自体の定義がアップデートされておらず(調べてないですが、時代の変化に追いついてないことは確かと思ってます)、かつ曖昧です。 結果「イクメン」という言葉に対する期待に大きな幅が生まれ、パパ・ママの当事者間ですら相違がある、という状況が起こっているのではないでしょうか。

イクメンではなく父親です」はまさにこれで、"ふつうの父親"に期待する働きの高まりと、イクメンへの期待値のブレによる失望から生まれた発言ではないかと考えます。

期待値の相違を減らすためには、もう少しイクメンの定義の具体性を上げる必要がありそうです。 しかしながら、たとえば

イクメンたる行動の要素を集めて、これらの要素のうちN%以上を満たしたらイクメン認定!」

みたいな定義に意味があるとも思えません。

特に働き方の多様化により、家庭ごとの制約があまりにも異なり、同じものさしで図ることが困難、というかほとんど意味を成さないと思われるからです。

「何かをやる」という特定の行為にとらわることなく、しかしもう少し具体的な、かつみんなが納得できる定義が必要ではないでしょうか。

バイナリ思考

育児休業を取得したらイクメン」 「子供をお風呂に入れた程度でイクメン(じゃないよ)?」

これら イクメン or Not の思考は、いわゆるバイナリ思考といわれる認知バイアスの一種です。 気をつけていても、この思考に陥ってしまっていることが結構あります。

そもそもイクメンかどうかなんてどうでもいいはずなんですよね。 各家庭のコンテキスト/制約において、男性が育児にコミットしている状態を実現することが目的なはずです。

ゼロイチのバイナリ思考を止めて、イクメンをグラデーションで捉えましょう。

今の社会、みんなそれぞれ少しずつイクメンの要素をもっているものです。 でも自分で「僕はイクメン」って思ってしまうと、それ以上先に進めなくもなりそうです。 (冒頭自分で言ってましたけど、、)

この状況を打破するには、さらなる高みを目指して、イクメンを磨いて成長していけばいいと思います。 実はオリジナルの定義にも、ちゃんと書いてあるんですよね。

イクメンとは、 ~自らも成長する男性を指す。

そのためには、規範とする姿、ともすると到達不能と思えるような高い目標が必要です。

モダンイクメン宣言

というわけで、「イクメン」という単語を、特定の行動ではなく、今の時代の父親が備えておくべきマインドセットとして再定義する必要があると考えます。

Do イクメン から、 Be イクメンへ。

その目指すべき姿として、「モダンイクメン」を提唱します。

Modern Agile から着想を得ています。

modernagile.org

具体的には、以下の4つにより構成されるマインドセットです。

Make Safety a Prerequisite / 安全を必須条件にする

子育てにおいて、安全は最重要&最優先課題であると言えます。 物理的な安全はもちろん、家庭内での心理的な安全も大切だと考えます。

物理的な安全

  • 3歳までにどんなスケジュールで予防接種を受けますか?
  • 乳幼児で最も多い事故は?その対策は?
  • かかりつけの病院は?アレルギーは?飲めない薬は?
  • 心肺停止時など、救急車が到着するまでの間適切な対処をするための訓練を受けていますか?

などなどなどなど。挙げればキリがないですが、特に乳幼児期は事故や病気などの危険がいっぱいです。 子供の命、身の安全を守れることは、親としての最低限の責務と言えます。

ママに任せきりになっていませんか...?

心理的な安全

先程も述べたように、パパとママそれぞれのお互いへの期待値をすり合わせることが大切です。 この共通認識から醸成されるパパとママの間の信頼関係は、子育ての土台であると言えます。

そしてこの信頼関係の構築には、頻繁で濃密なコミュニケーションが不可欠です。

その日あったことを食事などの機会に毎日報告し合うことはもちろん、作業をともにしてお互いのやり方を共有したり、 今週の予定を確認しあったり。中長期的な家庭ビジョンについても定期的に振り返り、話し合う必要があるでしょう。

Adaption & Learn Rapidly / 高速に学習&適応する

子供の成長は早いです。 そして、子育てにおいて状況は刻一刻変化します。

昨日できなかった寝返りが、たっちが今日できるようになったり。 できることが増えたら危険が増えます。

興味のあるもの、好きなものが増えたり減ったり。 遊び方もすごい速さで進化します。

突然癇癪を起こしてみたり。 いきなり体調を崩してみたり。

これらの変化に対応するためには、やはり密なコミュニケーションが土台として必要となります。 変化を適切に捉え、適応していく必要があります。

Deliver Love Continuously / 継続的にラブを届ける

ラブです。愛です。

次男と対面したとき、宇宙の真理を感じました。

「無限って2で割っても無限なんだ...」

そう、親の愛情は無限です。

しかしながら、感じているだけ、溢れさせているだけではダメです。届けましょう。

「大好きだよ」「愛してるよ」

ちゃんと伝えられていますか? 言わなくても伝わる?意外と伝わってないものです。

言うだけではなく、行動で示しましょう。 見返りを求めず、率先して与えましょう。

義務だから育児を、家事をやるのではありません。 愛しているからやるのです。

時々ではなく頻繁に、継続的に、です!

Make Family Awesome / 家族 を最高に輝かせる

家族の全員が誰も無理をせず、持続可能なペースで、子育てを楽しみながら、自分の人生の目標の達成にも邁進できている。 そんな「家族が輝いている」状態にコミットしましょう。

現代の日本の子育ては、明らかにママへの負担が高いです。 もちろん各家庭の差はあると思います。 ママだけが育児を理由に何か人生で大切なものを諦めることなど、あってはなりません。

そして、家族にはもちろんパパも含まれます。 自己犠牲的になるのではなく、家族全員が輝ける「最善」を、コミュニケーションを通じて家族で考え実践しましょう。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

肝心のイクメン再定義がモダンアジャイルをもじったもので、正直半分くらいは「モダンイクメン」が言いたかっただけですが、 「何をやったか」ではなく、今の時代に沿った「マインドセット」としてイクメンを再定義する、という点については、割と真面目に考えています。 また、きっとみなさんにとっての「モダンイクメン」なマインドセットがあるはず、と思います。

もちろん僕がこれらすべてを備えているかというと、そうではありません。 まだまだ父親としても未熟ですが、実際に育児休業を過ごす中で、この4つの心得を自分の父親としての振る舞いの指針としています。

もっともっと、パパもママも最高に輝ける社会になっていけば良いなと思います!